出会いと別れ

タバコを吸っている人はダサい。

誘惑に負けた人が吸うものだ。

百貫デブと同じだ。


僕は2年前の夏20歳の誕生日を迎えた。

20歳の誕生日なんて盛大に祝われるものだと思った。

でも現実は違った。

普通に7時に起き、普通に会社に行った。


いつも通りの仕事をこなし会社の帰り道、なんて寂しい帰りなんだと悟った。

20歳を迎えたからこそ、できることをしようと思った。


正直、お酒も風俗もかじっていた。

「タバコだけ吸ったことないな。」


会社の帰り道、少し遠回りしてコンビニに寄った。

行きつけのコンビニだと、煙草デビューがバレる気がしたからだ。


コンビニの駐車場につく。

吸うならかっこいいタバコを吸いたいと思った。


一番に頭をよぎったのは椎名林檎だった。

椎名林檎、スペース、煙草で検索し、「ハイライトだ」と決めた。


店に入るやいなやなれた口調を装って、「ハイライト2つ」と言った。

2つ以上まとめて買うものが普通だと思っていた。

そしてライターは買わなかった。

初めて吸うのがバレそうな気がしたからだ。


コンビニの店員さん「青ですか、緑ですか?」


『ハイライトに種類なんてあんのか?椎名林檎教えてくれ!どっちを吸ってるんだ?』


訳がわからず「強い方で!」と言った。

正解は青だった。


すぐに車で吸った。

親にもらったボロい車だったから喫煙車にする覚悟はあった。

そして、お墓まいり用のライターが車にあったからそれを使った。


すぐさま煙草の吸い方を調べた。

ライターの火をつけながら煙草を吸うことを初めて知る。


初めて吸った感想はよくわからなかった。

何が美味しいかわからなかった。


後日友達に教えてもらい、肺へ入れるようになった。

そして、友達が吸うタイミングに合わせて、

『こういう時に吸うんだ』って感じで一緒に吸うようになった。


友達「ハイライトなんて最初に吸うもんじゃないよ」

俺「っえ?」


それからラッキーストライクのソフト、アメスピの水色を経由し、ゴールデンバットに行き着いた。

ゴールでバットは渋い。重い。安い。とても好きだった。


そしてこの秋、ついにゴールデンバットが生産中止。

店頭からゴールデンバットが消えた。


大好きだった女の子が、「私、東京行くの。女優になりたくて」と上京する映画のように

ゴールデンバットは勝手にいなくなってしまった。


体に悪いと言われているのに、煙草にハマる人がなぜあんなにいるのか。

喫煙所のあんまり親しくないのに喋ってしまう雰囲気。

彼女にやめろと言われてるのに隠れて吸ってるやつ。

ロックバンドの歌詞に出てきがちのタバコ。


気持ちがわかった気がした。


僕がこれから煙草を吸い続けるのかはわからないが、とりあえず禁煙したいな。


2年間、たった少しの時間だけど、朝起きて吸う煙草。ステーキ食べた後に吸う煙草。ボードに行って雪山で吸う煙草。ライブハウスでライブを観ながらすう煙草。母と換気扇の下を取り合いしながら吸った煙草。なんかどれも、喫煙所での少しの会話と風景が思い出となり、頭の中に残りました。


喫煙生活楽しかったな。